知ることでつながろう! 発達障害者特有のコミュニケーション文化とは

宇樹 義子宇樹 義子

作成日 2017/08/17 更新日2017/09/05 4,495views

職場の発達障害者と接する中で、彼らの一風変わった言動に戸惑いを覚える雇用者・同僚の人は多いでしょう。
実は彼らの背景には、「発達障害者特有のコミュニケーション文化」とも言えるものが存在しています。

今回は、発達障害を持つ私が、発達障害者のいる職場でありがちなトラブルの例を挙げ、当事者の視点から解説を加えて、打開のヒントを探ってみたいと思います。

発達障害者のいる職場でのトラブルあるある4つ

発達障害者と発達障害でない人の間では、トラブルが起こることがよくあります。
だいたいの場合は、発達障害者の言動に周囲が腹を立て、「この人には悪意があるに違いない」という誤解に陥ってしまうパターンです。
本人には悪意がないので(あとで詳しく解説します)、周囲の反応に戸惑っていることが多いです。
いくつか例を挙げてみましょう。

※AさんBさんを発達障害でない人、「凸凹さん」を発達障害者とします。

1. 冗談に対して質問する

Aさん「ずっと雨が降ってたのに、私が営業に出かける今日は天気がいいな」
Bさん「Aさんの日頃の行いがいいからじゃないですか?(笑)」
Aさん「あははははー! まあね!」
凸凹さん「どういう意味ですか? どこが面白いんですか? 今日の天気と日頃の行いには関連性があるのでしょうか? それから、日頃の行いとは例えばどういうものを指すのでしょうか?」
Aさん・Bさん「ええっ…??」

2. 目上の人の5分の遅刻を指摘する

Aさん「すまない、会議に少し遅れてしまって」
Bさん「いえ、A部長、今日は電車のダイヤも乱れてますし、仕方ないですよ。お気になさらないでください」
凸凹さん「A部長は5分遅刻ですね」
Bさん「凸凹さん、A部長はもう謝ったんだし、そんなに責めなくても…」
凸凹さん「責めてはいませんが、5分遅刻ですよね?」
Bさん「凸凹さん、しつこいよ!」
凸凹さん「??? 5分遅刻ですよねって言ってるんですけど」
Aさん「君は嫌味だねえ! 私はもう謝ったんだから許してくれよ」
凸凹さん「??? 嫌味ではないですし、そもそも怒っていないので許すも許さないもありませんが?」
Bさん「いい加減にしてくださいよ凸凹さん!」

3. 「常識」に従わない

こちら↓の本にとてもわかりやすい例があったので紹介します。

著者:備瀬 哲弘
出版日:2015/10/20
出版社:集英社

本に書かれていた例を再構成すると以下のような感じになります。

アロハシャツが大好きな凸凹さんは、毎日アロハシャツを着て出勤していました。
しかしある日上司のAさんから、「職場にそういう派手なものを着てくるのはちょっと…」と苦言を呈されます。
すると凸凹さんは次の日、まったく悪びれない様子で「ちょっと地味なアロハシャツ」を着て出勤してきました。
Aさんはバカにされているように感じ、凸凹さんに「もうアロハシャツは着てくるな! 常識で考えろ!」と言うと、凸凹さんは怪訝そうな顔をしてこう言いました。
「常識と言われてもわかりません。就業規則に書かれていませんし。アロハシャツがだめなら、そのように書いておいてください」

4. 「適当にやっておいて」に絡む

Aさん「凸凹さん、これやっておいて」
凸凹さん「いつまでに、どのようにですか? これはなんのための資料ですか?」
Aさん「ええ? 細かいなあ。さっさと適当にやってくれればいいんだよ。私は忙しいんだ」
凸凹さん「お忙しくても、説明はしていただかないと困ります。さっさと適当に、というとどういう感じでしょうか?」
Aさん「それぐらい自分で考えてよ! なんでもかんでも質問して、あなたバカなの? それともバカにしてるの?」
凸凹さん「私は少しバカかもしれませんが、Aさんをバカにしてるつもりはありません。考えてもわからないからお訊きしてるんですが…」

どこがすれ違ってる? 発達障害者のコミュニケーション文化の特徴とは

ここまで、発達障害者と発達障害でない人の間のコミュニケーション上のすれ違いの例を見てきました。
発達障害者のコミュニケーション文化では、どんな要素が周囲と大きく違っているのか、何が周囲からの誤解の原因になっているのかを見てみましょう。

言葉は情報をやりとりするもの

発達障害でない人の文化では、言葉は感情をもやりとりするもの、と考えられているようです。

しかし発達障害者の文化では基本的に、「言葉=純粋に情報をやりとりするもの」と考えられているように思われます。

このため発達障害者の中には、感情的な状況(場の雰囲気や相手との関係性など)には左右されず、どんなときも同じような基準で発言する人がいます。たとえば…

  • 疑問があれば疑問が解消するまで質問し続ける(1,4の例)
  • 確認されていない事実は確認されるまで確認しようとし続ける(2の例)

ということになります。
結果、発達障害の人は周囲の人から「普通ならしない発言をするなら感情的な理由があるに違いない」→「悪意があるに違いない」と誤解されることになるわけです。

従うべきことは明示されるべきである

発達障害者の文化では、「従うべきルールや指示は明記・明言されるべきである」と考えられる傾向があります。

しかし、発達障害でない人の文化では、「常識」や「適当」といった不文律をそれぞれが自分で把握し、黙ってそれに従うのが普通かつ正しいとされているようです。

ここでもやはり、発達障害者とそうでない人の間に衝突が発生します。たとえば…

  • 就業規則に書かれていない「常識」には従わない(3の例)
  • 「適当にやって」という指示だけでは動かない(4の例)

ということになります。
結果、発達障害の人は周囲の人から「普通なら黙って従うことに従わないなら感情的な理由があるに違いない」→「悪意があるに違いない」と誤解されることになるわけです。

発達障害者のコミュニケーション文化のメリットとは?

発達障害者のいる職場では、発達障害者とそうでない人の間でのすり合わせが成功しさえすれば、発達障害者特有のコミュニケーション文化のメリットを引き出すことも可能です。

コツさえ押さえれば人一倍貢献してくれる可能性

発達障害者は悪意があってルールや指示に従わないわけではありません。
従うべきことをきっちり明示しさえすれば、人一倍熱心に従ってくれる可能性があります。

それは、彼らは明示的に指示されたことに対しては(ちょっと本人も周囲も苦しくなるほどに)律儀に従う、四角ばったところがあるからです。
ある意味、指示に対して手を抜こうとしても抜けないのが発達障害者であるとも言えます。

たとえば、良かれと思って「これ、できるだけでいいから適当にやって」という言葉で資料作成の指示を出すのではなく

  • いついつまでに【期限】
  • こういう方法で【方法】
  • フルパワーが10としたら5ぐらいの力でやりなさい【程度】
  • この資料の使用目的は○○なので、✕✕に注意して【目的・注意点】

とメモに箇条書きにするぐらいの気持ちで端的に明示的な指示を出せば、あなたの職場の発達障害者はいままでとは別人のように作業に打ち込み、素晴らしい仕上がりの資料を提出してくれるようになるかもしれません。
少なくとも、あなたと相手の間のコミュニケーションストレスは大幅に軽減されるでしょう。

場によって大きな戦力になりうる

発達障害者の「どんなときも疑問点にこだわる」傾向には一般的なコミュニケーション上のリスクはありますが、うまく活かせば強力な戦力にもなりえます。

彼らは、ほかの人がなんとなく通り過ぎてしまうようなところに疑問点を発見し、いったん発見したら解決するまでとことん引っかかり続けます。
問題を発見・追及する力が周囲よりも強いと捉えることができるわけです。

こういったところは、たゆみない思考や問い直しが必要とされる場…
たとえば研究的要素のある職種、小さな不備が大きなリスクにつながりかねないような部署などでは大きな利点となるでしょう。
また、「今までなあなあになっていた諸問題に向き合いたい」という組織変革のタイミングにも、発達障害者の問題提起力は強みになりうると言えます。

まずは互いの文化に思いを馳せることから

まずは互いの文化に思いを馳せることから

前の記事では、「支援は異文化コミュニケーション」と言いました。

たとえば、アメリカ人がお箸を使えないからといって怒り出す日本人はそういませんよね。
私たちは怒り出す前に、「フォークやナイフで食事する」という、彼らの文化的背景を思い出すからです。

発達障害者の支援でも、同じようなことが言えます。
発達障害者が他の人と同じようなコミュニケーションができなかったとしても、まずは彼らの文化的背景に思いを馳せてみる。
そうすることで少なくとも、互いの間の無為なストレスを避けることができるようになります。

毎日のコミュニケーションストレスの軽減は非常に大事です。
ストレスの少ない日々が、発達障害者に「この職場で働き続けよう」という希望を与えてくれるからです。
こうしたことは、働くこと≒人と関わることに困難を抱えている発達障害者にとって想像以上に支援たりえますし、むしろ、これが発達障害者支援の核心・真髄であるとも言えるでしょう。

異文化に生きる者どうし、一歩ずつ歩み寄り、同じ職場の仲間となっていきましょう。

宇樹 義子

宇樹 義子

成人発達障害者(高機能自閉症)。30過ぎまで発達障害が発覚しなかったこともあり、思春期から20年ほどもろもろの二次障害に苦しみました。自身の経験をもとに、発達障害者や悩みを抱えた人に向けていろいろと発信中。ライターの仕事のかたわら、個人ブログ「decinormal」を運営。動物が大好き!

▼会員登録がまだの方

▼凸凹ナビ会員の方


凸凹ナビとは?

凸凹ナビ(でこぼこなび)は、障害や凸凹がある人のための求人情報・転職支援サービスです。障害者手帳をお持ちの方や取得をご検討中の方を対象に、お仕事探しのお手伝いをいたします。webサイト上でも、ご希望のエリアや職種・業種で求人を絞り込んで検索することができます。まずは凸凹ナビに会員登録(無料)をして、ご希望条件をお知らせください!


凸凹情報室 人気記事

凸凹情報室 新着記事

カテゴリから記事を読む