発達障害や精神障害のある人の新しい働き方 ~ソフトバンクのショートタイムワーク制度~

凸凹ナビ編集部凸凹ナビ編集部

作成日 2017/06/14 更新日2017/09/05 8,473views

障害のある人を雇用するための環境づくりとはなんでしょうか?
段差の解消や車いす用トイレの設置など、設備のバリアフリーを想像する人が多いかもしれませんが、就労のバリアはそれだけではありません。

「週40時間勤務のフルタイム」という長時間勤務を前提とした働き方では、発達障害や精神障害の人は働くことが難しい場合があります。
そういう人が働くことができる雇用の形をつくるために、ソフトバンク株式会社では「ショートタイムワーク制度」を導入しています。
ソフトバンク株式会社の人事総務統括部CSR統括部CSR部の木村さんと横溝さんにお話を伺いました。

ショートタイムワーク制度とは

木村幸絵さん

木村幸絵さん(人事総務統括 CSR統括部 CSR部 CSR1課 課長)

ーー「ショートタイムワーク制度」について教えてください

木村)この制度は、働く意欲があっても障害などの理由により長時間勤務が難しい方が、週20時間未満で就業できる新しい雇用制度です。
ソフトバンクでは、東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野と連携して2016年5月から導入しました。

2017年6月6日現在、19名の方がこの制度で働いています。
働いている人は、ADHDやASDなどの発達障害や、統合失調症や双極性障害やうつ病などの精神障害がある人達です。

ーー発達障害と精神障害に特化したのはなぜでしょうか?

木村) ソフトバンクでは、障害の有無にかかわらず業務を任せ、全ての社員に同じ人事制度を取り入れており、昇給や昇格、評価の仕組みも同じというスタンスで障害者雇用を行っています。
それにより身体障害のある人の雇用は進みましたが、発達障害や精神障害のある人の雇用は進まなかった中、CSR統括部(以下、CSR)で取り組みをはじめました。

CSRでは9年前から東京大学先端科学技術研究センターと共同して、iPhoneやiPadなどの携帯情報端末を障害のあるお子さんの生活や学習に活用する事例研究をしてきました。
この取り組みによって学習環境や生活環境の改善に寄与してきましたが、そうしたお子さんが社会に出て就職しようとしたときに、なかなか機会がないという問題があります。
この問題に取り組むために「ショートタイムワーク制度」をはじめました。

原則として週1日4時間の勤務

横溝知美さん

横溝知美さん(人事総務統括 CSR統括部 CSR部 CSR1課)

ーーショートタイムワーク制度で働く人の様子を教えてください

横溝)朝は電車のラッシュの時間帯を避けるために10~11時の間に出勤して、3~4時の間に退社となります。
途中に休憩を1時間挟んでおり、部署の人とお昼を一緒に食べたりコミュニケーションをとったりしているようです。

原則として週1日4時間の勤務ですが、人によっては6時間勤務の人や週2日4時間働いている人もいます。

業務内容はアンケート集計や書類をPDFに取り込む作業、郵便物の封入・発送といったシンプルな業務が中心です。
中には特定のスキルを持っている人もいるので、デザインができる人には社内イベントのチラシを作ってもらったり、英語ができる人には資料の英訳を担ってもらったりしています。

社員にもメリットがある制度

ーー業務内容はどのように設定しましたか?

横溝)ショートタイムワーク制度を始める際に、各部署に対して資料整理などの定常業務やルーティンワークがあるかを呼びかけました。
すると33部署から上がってきたので、業務内容を検討したうえでヒアリングを行いました。

木村)その後、業務の内容に対して、難易度と時間数をカテゴリに分けたうえで検討して、ショートタイムワーク制度の求人をつくりました。
社員の側からすると、自分の業務の中で毎日2時間かかっていた定常業務を、代わりにやってもらえることは大きなメリットです。

他の企業がやっている業務切り出しと大きく異なるのは「量」なのかと思います。
フルタイムの業務をつくるとなると「そこまでないよね」となってしまいますが、ショートタイムワーク制度の場合には1日4時間なので、業務を切り出しやすいです。

継続して働いてもらうための工夫

ーー制度がスタートしたときのことを聞かせてください

木村)最初は東京大学で短時間雇用で働いていた方を紹介してもらいました。
20~30代の男女で、2人とも発達障害があります。
業務の説明の仕方や対応は配慮しましたが、それさえすれば特に問題はありませんでした。

1人の方は、もともとフルタイム勤務をしていたそうですが、仕事が合わずに退職されたと伺いました。
現在、私たちとは継続して働いていただけているため、働くことができなかったなんて、もったいないと感じました。
継続して働いてもらうためには働き方の工夫が必要なのだと思います。

横溝)ショートタイムワーク制度で働き始める人には、マニュアルを用いて勤怠の入力や日報の書き方などを最初にお伝えします。
それから各部署に行ってもらいます。
部署でも「質問があったときに対応できる体制にしてください」とお願いしていますが、日報の中で質問を受けて、CSRの方で答えることもあります。

例えば、音に敏感な人から「ノイズキャンセリングのヘッドフォンを付けて業務をしたい」という申し出があったので、その人はヘッドフォンをして業務をしています。

「自己紹介シート」について

ーー採用の方法について教えてください

木村)最初の2人は東京大学の紹介で来てもらいましたが、その後は就労移行支援事業所や就労継続支援A型事業所や障害者へのサポートをしている団体からの紹介で来ていただいています。

求人方法としては、ショートタイムワーク制度の概要や目的を伝えた後、勤務地や仕事内容、求める人物像について支援機関に説明します。
そのうえで求人票を送って、求人に合う人がいないかをご相談しています。

応募者には履歴書とあわせて「自己紹介シート」も記載していただきます。
「自己紹介シート」は障害の詳細や支援機関の情報、業務に関することを記入するシートです。
ビッシリと書く人もいるし、サラッとしか書かない人もいますが、気になったところは面接のときに尋ねるようにしています。

自己紹介シートの項目(「ショートタイムワーク制度導入ガイド」p.30-31より 一部抜粋)

■障がいについて
・障がい(診断名)、精神障害者保健福祉手帳等級、障害者手帳取得年月日
・障がいに気づいた時期、理由・経緯、経過
・就労に関しての主治医の意見・服薬状況 など

■支援機関
・支援施設名や事業所名
・通所機関
・現在の通院頻度 など

■業務上でのこと
・得意な業務・苦手な業務、障がいがあることで行うことが難しい業務、対応策
・仕事をする上でストレスに感じること
・体調不良のサイン・出る症状・特性、対処方法 など

自己紹介シート

あとは、業務によってはすこし複雑なものもあるので、その理解ができるかどうかを確認しています。

障害をオープンにして働く

ーー受け入れ部署に対しては、障害についてどのように伝えていますか?

横溝)入社の際に障害についてオープンにしていいかを本人に確認し、了承いただいた場合には、障害のことや症状について部署に説明をした上で受け入れてもらっています。

木村)例えば、統合失調症の人は幻聴が聞こえるときは疲れやすいので、部署の側にも「そういう時は休ませてあげてください」という話をしています。
その時間は勤務時間から抜いてもらうことも伝えています。

横溝)一緒に働くためにどんな配慮をしてほしいのか、本人が理解していることが大事かと思います。
例えば「今日は疲れやすいので10分ほど休ませてください」と言って、テーブルでうつ伏せになって休んでいる人がいました。
言ってくれなければ「さぼっている?」「体調が悪いのかな?」などの誤解が生じますが、コミュニケーションを取ることで理由がわかるので安心できました。

お互いを理解するための発信が大切

ーー今後の展望についてお聞かせください。

木村)社内的には、採用を進めて年度内に30名まで増やしていきたいと考えています。
社外的には、他の企業に対してショートタイムワーク制度で得られた知見を発信していきます。

ーーーこれから障害者雇用を進める企業の採用担当者や、障害のある求職者にメッセージをいただけますか?

木村)障害の有無に関係なく、相手を100%理解するのは不可能だと思っています。
さらに、障害があるとコミュニケーションを取らずして理解することはできません。

「今日は幻聴がすごく聞こえてしまう」と本人が伝えてくれると、こちらもリアルに感じることができるので「そういう状態なのは大変だね」と理解することができます。
障害を自身で理解し、周囲に理解を促しながら生活に必要なサポートを障害者自らが主張する行動を「セルフアドボカシー」というそうです。

お互いに理解しようとするためには発信することが大切です。
お互いのことを思いやりながら「ショートタイムワーク制度」を進めていきたいと思います。

凸凹ナビ編集部のふりかえり

「働きたいけれど長時間は難しい」という人も、雇用機会を得られる可能性を感じる制度でした。
障害をオープンにしたうえで配慮を受けながら働けることが一般のアルバイトとは大きく異なります。
木村さんは「発信し続けるのは大変なことだと思うけれど・・・」と前置きをした上で「それでも、お互いを理解しようとするためには発信することが大切です。」とおっしゃっていました。
発達障害や精神障害は「何に困っているのか?」が周囲に伝わりにくいので、言葉にして伝えることが必要なのだと理解できました。
ソフトバンクのHPに公開されている「ショートタイムワーク制度 導入ガイド」には、お互いを理解しながら働くためのノウハウが書かれています。
多くの人に知ってもらい、広まって欲しい雇用システムです。

凹ちゃん

お仕事探しには、障害や凸凹がある人のための求人情報・転職支援サービス『凸凹ナビ』を使ってみてください。
全国の企業の障害者求人の紹介や、お仕事探しのお手伝いをしています!

凸凹ナビに会員登録(無料)をする

《取材協力》
木村幸絵さん(人事総務統括 CSR統括部 CSR部 CSR1課 課長)
横溝知美さん(人事総務統括 CSR統括部 CSR部 CSR1課)
※内容は掲載当時の情報です。記載されているサービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。

《参考資料・関連情報》
・ソフトバンク「障がいがある人の「働きたい」を実現する新しい雇用制度とは」
・ソフトバンク「障がいにより長時間勤務が困難な方が週20時間未満で就業できる「ショートタイムワーク制度」の導入ガイドを公開」
・ソフトバンク「みんなに知ってほしいソフトバンクのこと|ソフトバンク障がい者採用」

凸凹ナビ編集部

凸凹ナビ編集部

凸凹ナビ(でこぼこなび)は、障害や凸凹がある人向けの求人情報・転職支援サイトです。障害者として働きたい人・障害者を雇いたい人・障害者の就労に関心がある人に向けて、役立つ情報をわかりやすくお届けします!

▼会員登録がまだの方

▼凸凹ナビ会員の方


凸凹ナビとは?

凸凹ナビ(でこぼこなび)は、障害や凸凹がある人のための求人情報・転職支援サービスです。障害者手帳をお持ちの方や取得をご検討中の方を対象に、お仕事探しのお手伝いをいたします。webサイト上でも、ご希望のエリアや職種・業種で求人を絞り込んで検索することができます。まずは凸凹ナビに会員登録(無料)をして、ご希望条件をお知らせください!


凸凹情報室 人気記事

凸凹情報室 新着記事

カテゴリから記事を読む