高度なコミュニケーションスキルが必要!? 発達障害者が美容院を超ニガテな理由

宇樹 義子宇樹 義子

作成日 2017/11/21 更新日2017/11/29 1,899views

発達障害あるあるのひとつとして、「美容院がニガテ」があります。
その理由には、美容院では五感への負担が大きいことのほかに、「高度なコミュニケーションを要求される」ということがあります。
今回は当事者の視点で、美容院のつらさをコミュニケーション上の負担から考えてみます。

感覚過敏的につらい

美容院は、照明はまぶしく、ドライヤーやBGMなどの音が大きく、シャンプーや薬液の匂いも強い。
タオルやケープを身につけて長時間じっとしていなければならないし、加熱の必要なメニューなどやってもらおうものなら、のぼせて頭痛がしてきたりします(発達障害者には体温調節の苦手な人が多いです)。

五感の刺激がとても強い美容院は、感覚過敏のある発達障害者にとってそもそも非常につらい場所です。

美容師さんとのコミュニケーションはもっとつらい

感覚過敏にとってしんどいということだけでも十分に美容院から足が遠のく原因になるのですが、発達障害者にとって、美容院にはもっと恐ろしい要素があります。
それは… 美容師さんとのコミュニケーション。

「世間話」が苦痛

「きょうはお休みですかー?」
「学生さんですかー?」
「これからどこか行かれるんですかー?」
「普段はおうちで何されてるんですかー?」

このあたりが美容師さんが振ってくる話の定番でしょうか。
彼らが良かれと思ってこうしてくれているのはよくわかるのです。
実際、おおかたの客がこれでリラックスしたり、会話のとっかかりを掴ませてくれたりするし、会話も含めたサービスに満足感を得て帰っていくのでしょう。

しかし、残念ながら発達障害者は、そういう「おおかたの客」には当てはまらない人たちなのです。
世間話でリラックスするという感覚が純粋にわからない。※
そもそも、特に親しくない人との会話自体がかなりの苦痛です。

※世間話でリラックスする人はけしからん! と言いたい意図はありません。念のため。

少なくとも私の場合、美容院に着くまでの間に、これからの苦行の1時間なり数時間を思ってガチガチに緊張し、憂鬱に押しつぶされそうになっています。

質問者の写真
感覚刺激だけはなんとか耐え抜くから、どうか世間話なるもので私をさらに混乱させないで…!

そんなふうに祈りながら美容院のドアを押しているのです。

「普通の生活」ができない自分に落ち込む

私には過去10年ほど、無職独身、鬱のひきこもりで昼夜逆転、みたいな生活を送っていた時期がありました。
そういう時期には、美容院はとりわけつらかったです。
美容師さんが良かれと思ってしてくれる質問のひとつひとつが、すべて「ああ、この人たちの想定している範疇に入れない私なんかが来て申し訳ない、ごめんなさいごめんなさい」みたいになってしまっていたのです。

相手の美容師さんが私よりも10も若いような、人生楽しく送っていそうな人だったりすると特にみじめな気持ちでした。思い出すだけで泣きそうです。

いま思えば、私がそういう「普通でない」生活を送っていたのは私の怠慢や甘えなどではなく、(当時自覚もしていなかった)発達障害と、発達障害者を受け入れる素地のまだ整っていなかった社会状況のせいだったことがわかるのですが、当時はそういうことにまったく思いが至りませんでした。

「質問には事実を答えなければ」スイッチが入ってしまう

事実を答えるのがつらいなら適当にはぐらかせばいいじゃない、と私も頭では思うのですが、それが難しいのが発達障害者なんですよね。

自閉傾向のある発達障害者の場合、コミュニケーションの中で「事実」や「情報」を重んじる傾向があることが多いです。
簡単に言うと、「された質問には答えなければならない」「答えるときには事実を答えなければならない」という考えになってしまうのです。

空気が悪くなるだろうことがわかっていても、自分が答えたくなくても、なぜか答えなければならない。
私はそんな変な規則に縛られてしまいがちでした。

そして地獄のような空気が

そして… 結果として地獄のように重たい空気が訪れます。
以下は、私が以前、まだ発達障害を自覚していなかったころに実際にしたことのある会話です。

(美容師さん)

美容師さん
学生さんですかー?
宇樹 義子
いえ、社会人です(無職は社会人って言うのかな? と思いながら)
美容師さん
そうなんですねー、お若く見えるので学生さんかと思いました! じゃあ、今日はお休みなんですか?
宇樹 義子
ええまあ、そうですね(まあ嘘ではなかろうと思い)
美容師さん
そうなんですねー。お仕事は何されてるんですか?
宇樹 義子
えっと …無職です
美容師さん
あっ… そうなんですね…(必死に気を取り直した感じで)今日はこれからどこか行かれるんですか? 彼氏さんとデートとか?
宇樹 義子
いや、どこにも… お金もないし、彼氏どころか友達もいないです
美容師さん
あっ… そうなんですね。じゃあ普段はおうちにいらっしゃるんですね。(気を取り直したように)普段おうちでは何されてるんですか?
宇樹 義子
普段… ? (なんでそこまで答えなきゃいけないの? とうっすら思いつつ)…寝るかネットしてるか本読んでるかですね…
美容師さん
そうなんですね… (気を取り直したように)でも私本とか読めない人なので、本読める人すごいと思います! かっこいいと思いますよ!
宇樹 義子
そう、です、かぁ…
美容師さん
……
宇樹 義子
……

地獄です。あれは地獄でした。

私は今はたまたますごく無口でテンションの低い美容師さん(珍しい!)を見つけることができたのでとても助かっていますが、以前は美容院をどう乗り切るかは人生においてかなり大きな課題でした。

発達障害の大人向けの美容院が増えますように

私は「今後、発達障害者への対応方法を把握している美容院や美容師さんが増えてくれれば」と願っています。

一部では発達障害児向けの美容院も出てきているようですが、成人・大人向けのものはまだ見かけたことがありません。
一方、介護需要が増えている中、高齢者を主な対象として訪問美容サービスを行う事業者も増えているようです。
たとえば、こうした事業を行っている人たちが発達障害についての知識を身につけるなどして、発達障害者にも対応できる訪問美容サービスや美容院を始めてくれたらとてもありがたいですね。

宇樹 義子

宇樹 義子

成人発達障害者(高機能自閉症)。30過ぎまで発達障害が発覚しなかったこともあり、思春期から20年ほどもろもろの二次障害に苦しみました。自身の経験をもとに、発達障害者や悩みを抱えた人に向けていろいろと発信中。ライターの仕事のかたわら、個人ブログ「decinormal」を運営。動物が大好き!

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