成人発達障害者が手帳取得した体験談 手帳のメリット・デメリットとは?

宇樹 義子宇樹 義子

作成日 2017/03/03 更新日 2017/08/01 2,834views

知的障害を持たないタイプの成人発達障害者が手帳を取得するにはどんな手続きが必要なのでしょうか。

「発達障害者用の手帳ってあるの?」
「手帳取得のメリット・デメリットとは?」

成人後に発達障害の診断を受け、精神障害者保健福祉手帳を取得した私の体験談です。

知的障害を持たない成人発達障害者の「手帳」申請方法

知的障害を持たないタイプの成人発達障害者が手帳を取得したい場合は、どんな手帳をどのように申請すればよいのでしょうか。

知的障害を持たない発達障害者は「精神障害者保健福祉手帳」を使う

残念ながら、現状(2017年)では「発達障害者専用の手帳は存在しません」
知的障害を持たないタイプの発達障害者は、ほかの精神障害者と共通の「精神障害者保健福祉手帳」を取得することになります。

※知的障害を持つ発達障害者は知的障害者として「療育手帳」も取得することができます。

※ごく限られた自治体で、知的障害を持たないタイプの発達障害者でも療育手帳がとれることがあるようです。
療育手帳が取得できる可能性はないか、念のため確認したほうがよいかもしれません。参考:兵庫県の例

精神障害者保健福祉手帳とは

「精神障害者保健福祉手帳」は、精神障害者用の障害者手帳です。
「精神障害者手帳」は通称であり、正式名称ではありません。

精神障害者保健福祉手帳の対象者は、厚生労働省のページの解説によると以下のとおりです。

何らかの精神疾患(てんかん、発達障害などを含みます)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象としています。
対象となるのは全ての精神疾患で、次のようなものが含まれます。
  • 統合失調症
  • うつ病、そううつ病などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物やアルコールによる急性中毒又はその依存症
  • 高次脳機能障害
  • 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
  • その他の精神疾患(ストレス関連障害等)

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申請方法

住んでいる自治体の役所で申請します。申請に必要な書類は以下。

  1. 申請書
  2. 医師による、精神障害の診断書
    (または、精神障害で障害年金を受け取っている人は年金証書のコピー)
  3. 手帳に貼る証明写真
    (自治体によってサイズが指定されていると思います)

診断書については、精神障害による初診日から6ヶ月以上経過している必要があります。

詳細は厚労省のページの「申請の方法」というタブを選択してください。

私の場合、残っている記録から判断すると、申請から交付までは1〜2ヶ月かかったようです。

成人発達障害者が手帳取得するメリット

成人発達障害者が手帳を取得するとどんな良いことがあるのでしょうか。

経済的に助かる

まず最も大きいのが、経済的にさまざまな支援が受けられるようになることです。
詳細は自治体によって異なるのですが、交通料金の割引を始め、各種公共料金などの割引があったり、いろいろな手当を受けられたりします。

いま住んでいる地域は車が運転できないと不便なところなのですが、私は障害の特性からか運転が死ぬほど苦手。
バスに頼らざるをえないのですが、バスの通常料金は正直、地味に出控えたくなる金額です。
でもここの自治体では3級手帳保持者の場合バス料金が半額になるので、出かけるときの抵抗がけっこう減りました。

詳細は厚労省のページの「受けられるサービス」というタブを選択してください。

各種支援を受けやすくなる

発達障害者・障害者向けの支援機関は、実は手帳がなくても利用できるところが多いです。
診断書だけで良いところもあれば、本人が日常生活に困っているというだけでOKなところも。

ただ、手帳を持っていると格段に話が通じやすくなります。
「手帳○級を持っているのですが」と伝えるだけで、支援者は「この人は確実にこの程度困っている」ということをだいたい把握してくれるようになるからです。

手帳はたとえるなら、障害者支援の世界における「水戸黄門の印籠」のようなもの。
「この手帳が目に入らぬか!」「ははーッ!」ではないですが、あれこれ苦労して説明しなくても相手がパッと支援態勢に入ってくれる便利な自己紹介ツールなのです。

それからもちろん、障害者雇用で就職したい場合には手帳が必須だというのも、とても大きなことです。

本人の障害受容が進む

手帳の存在感というのはけっこうなもので、自分の手のひらに手帳がそれなりの重量を持って載っていると、私の場合は「ああ、私は障害者なんだなあ…」という感覚がひしひしと感じられました。

30を過ぎるまで障害を自覚していなかった私。
診断を受けてからも半年ほどは、どこか自分の障害が他人ごとのようでした。
どこかで自分の障害を認めたくない自分もいました。
それが手帳を持つことによって、
「ああ、私は公的にも障害者と認められたんだ。もう無理しなくていい。人に頼っていいんだ」
と感じられるようになって、ずいぶん楽になったのです。

成人発達障害者が手帳取得するデメリット

私個人としては、困っている自覚のある成人発達障害者には手帳取得をおすすめしたいです。
でも、手帳取得にデメリットがないわけではありません。

偏見を受ける場合も

残念ながら、精神の手帳所持者だということがわかると偏見を受けることがあります

以前、タクシーで手帳による割引を頼んだところ、運転手さんがにこやかに「まさか、身体(障害者)でしょ?」と訊いてきたことがありました。

たぶん、お世辞のつもりだったのでしょう。
「あなたはアタマとかココロが悪いようには見えない。『普通』に見えるから、悪いのは体でしょ?」
ということだったのではと思っています。

運転手さんが善意であるのはわかっていながら、正直むっとしました。
正直に答える必要はなかったし、不快を表明してもよかったかもしれません。
でも、私には特性のひとつとして「質問されたことにはとりあえず答える」「とっさの反応をするのが不得手」というところがあります。
つい「いや、精神です」とだけ答えました。

運転手さんは明らかに「うっ、まずい」という感じで声を詰まらせ、「…そうなんですね」と言いました。
それきり前を見つめたまま一言も話しかけてきませんでした。

私の住む自治体ではタクシーの割引はわずかな額にしかなりません。
上のような経験をするのが嫌だし、割引には運転手さんとの会話や書類の記入が必要で面倒なので、タクシーでの割引は使わないことも多くなっています。

本人の障害受容が必要

手帳の取得は本人の障害受容を進ませてくれると上に書きましたが、これが心の負担になることもあります
障害受容の過程には「障害者である自分自身に対する偏見」と向き合わなければなりません。
障害者として生きていくことを受け容れるという行為は、終わってしまえばすがすがしいものですが、その過程は少なくとも私にとってなかなかにつらいものでした。

障害受容に強い葛藤を感じている時期の人は、手帳取得は慌てず、少し先延ばしにしたほうがいいかもしれません。

困っているならぜひ取得してみて

手帳の取得は、障害者である自分として人生を歩み始めるための大きな一歩になりえます。
取得することによるいろいろなモヤモヤも少しはありますが、得られるメリットの多さと比べると、私としては断然、取得にチャレンジすることをおすすめしたいです。

知的障害のない発達障害を自覚し、その特性で日常生活や仕事・就労にあたって困っている人は、ぜひ精神障害者保健福祉手帳の取得に向けて動いてみてください!

宇樹 義子
「自分で総合的に考えた結果、手帳取得はしない」という選択肢もあって当然です。
あなたにとって最も楽で、差し引きメリットの大きな選択肢をとってくださいね。

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宇樹 義子

宇樹 義子

成人発達障害者(高機能自閉症)。30過ぎまで発達障害が発覚しなかったこともあり、思春期から20年ほどもろもろの二次障害に苦しみました。自身の経験をもとに、発達障害者や悩みを抱えた人に向けていろいろと発信中。ライターの仕事のかたわら、個人ブログ「decinormal」を運営。動物が大好き!

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