情報に圧倒される? 発達障害者の「こだわり」や「コミュニケーション障害」の原因とは

宇樹 義子宇樹 義子

作成日 2017/09/29 更新日2017/09/29 3,106views

発達障害者がコミュニケーション障害や「こだわり」を抱えているということは、一般にも徐々に認知が広がってきているようです。
しかし、そうした発達障害者の特徴がいったいどこからくるのかは、まだほとんどの人が知りません。
周囲の人だけでなく、発達障害者本人さえも知らないことが多いのです。
今回は当事者の立場から、最新の発達障害研究で提示されている仮説を紹介・解説します。

まじめで杓子定規なのは、不安が大きいから

発達障害者と接していて「なんでも杓子定規で、きまじめだなあ」と感じる人はけっこういるのではないでしょうか。
中にはそんな発達障害者を、「きっちり行動することに苦を感じない、生まれつきまじめな人」だととらえる人もいるかもしれません。

実は、少なくとも私は、好んで「きまじめ」をやっているわけではありません。

私がもしきまじめに見えるとしたら、「そうしなければ世界が壊れる」かのような不安に襲われているから、やむをえず慎重になっているのです。

もしあなたが、これから氷点下の気温の中、薄氷の張った湖にひとりで踏み出さなければいけないとしたら…?
不安ですよね。分厚いウエットスーツを着込み、ライフジャケットや命綱を身に着け、防水のトランシーバーや笛なども装備して、それでようやく、一歩ずつ確認しながら歩いていくのではないでしょうか。

私が発揮するきまじめさは、そんな切迫したきまじめさです。
生きる上での大きな不安を、きまじめになることで少しでも軽減しようとしているのです。

発達障害者の抱える「生きることへの大きな不安」とは?

私が生きる上で、発達障害のない人よりも大きな不安を抱えていることはおわかりいただけたかと思います。
では、こうした不安は、いったい私のどこから出てくるのでしょうか?
最新の発達障害研究から、当事者の感覚でとても腑に落ちた仮説を紹介します。

情報に圧倒される!

こちらの本では、とても興味深い仮説が提示されています。

著者:熊谷高幸
出版日:2017/01/25
出版社:新曜社

この本の仮説によると、自閉症者を含む発達障害者は感覚刺激を脳で処理するにあたってアンバランスさを持っていて、頭が特定の刺激に支配されてしまうことが多いのだそうです。

自閉症者と通常者の刺激の取り入れ方の違い

著者の熊谷先生は、いままで自閉症の一症状とされてきた感覚過敏を、自閉症の原因、自閉症の各症状を形成する種に位置するものではないかと捉えています。
少し引用して紹介します。

刺激は好ましいものであれ好ましくないものであれ、強く焼き付いた場合には、記憶の中で存在し続ける。そして、周囲の状況とは独立して本人に働きかけるのである。

こうした脳に焼きつく刺激は結果的に以下の「自閉的」症状を形成すると、熊谷先生は考えています。(カッコ内は宇樹による補足)

  1. 回避(耳をふさぐ、逃走するなど)
  2. 没入(常同行動、ひとりごとなど)
  3. 記憶化(頭の中に焼きつく。フラッシュバック的現象)
  4. 見落とし(周囲からすると無視しているように見える≒コミュニケーション障害、注意散漫・過集中)
  5. 行動の切り替え困難(こだわり、コミュニケーション障害など)

熊谷先生の仮説では、自閉症というのは以下の順番で形成されるとされているわけです。

感覚処理のアンバランスを持ったAさんがいる
→Aさんが外界からの刺激に圧倒される
→Aさんが苦痛から逃れようと各種の「自閉的」とされる症状を示すようになる
→Aさんが「自閉症者」と呼ばれる

刺激についての引用部分はまさに私の感覚にぴったりくるもので、私の生きづらさ、生きることへの不安そのものを表しています。

私は以前から、こうした「情報刺激に圧倒される」感覚がすべてを引き起こしている感じを覚えていたので、熊谷先生のこの仮説を強く支持します。

変化が怖い、人が怖い!

ちょっとした刺激にすぐに圧倒されてしまう私にとって、人間社会は基本的に情報過多です。

毎日の気温や天気の変化。平日とそうでない日のテレビ番組の違い、電車の遅れ、ニュース速報、防災アラーム…
私は障害が比較的軽いので、全てがいつも通りでないからといってパニックを起こしてしまうほどではないですが、正直いって心身にとってかなりの負担です。

私が最も怖いものは人です。人はどこかに置いておけばこちらが動かさないかぎり動かないモノと違って、動き、話し、こちらに働きかけてきます。
それ自体が恐怖であるうえ、人とのコミュニケーションには固定された正解がなく、常に臨機応変さが求められるわけです。
社交的場面では私はガチガチに緊張し、短時間でクタクタに疲れてしまいます。

こんなことを感じているのは私だけかと思っていたら、本にまったく同じような記述があったので、これはやはり発達障害を持つ人にある程度共通の感覚なのかもしれないと感じています。

自閉症児の方から見ると、人というのは物とは比べものにならないくらい思い通りにいかない、やっかいな存在である。物のように同じところにとどまっていてくれないし、また、自然には動かないはずの物の位置を変えてしまう。

…人は勝手に動き出し、いつどこにいるかわからなくなる。そして、急に声を発し、自分に働きかけてくる。だから、自閉症の人にとっては全く行動を予測しにくく、不安を感じさせる存在となるのである。

やっとのことで把握した「世界」の姿がちょっとした変化で「ほどけて」いってしまう恐怖について、以下の本で当事者研究者の綾屋紗月さんも書いていらっしゃいます。

著者:綾屋 紗月
出版日:2008/09/01
出版社:医学書院

論理やルールの網が私を守ってくれる

変化が怖い私にとって、曖昧で移ろいがちな人の表情や感情の世界を捉えるには負担が大きいです。
このため私には、世界をはっきりした論理、ルールで捉えようとする傾向があります。

「常識で考えなさい」とか、「普通説明しなくてもわかるべきだ」「空気を読め」といった指示には、今でこそムキになって反論したりはしませんが、発達障害を自覚していなかった頃には必ず相手かまわず口喧嘩していました…

宇樹 義子
やってはいけないことなら先に説明しておいてください。またはルールに明記しておいてください!

よく似た言動をする発達障害者のケースは、こちらの過去記事にも出てきます。

まずは互いを知るところから

発達障害者の多くは、そのきまじめな印象の裏に大きな不安を抱えています。
一見そつなくコミュニケーションをこなしている当事者の中には、その裏で多大な努力を払って疲弊している人も。
現在の私もどちらかというとそのひとりですが、彼らは自分の言動がなにかと人を不快にさせがちなことを気に病んでおり、必死に普通のフリをしていたりもするのです。

人と人がうまく関わっていくには、互いを知ることが必要です。
これは、発達障害のない人どうしでも同じですよね。

まずは肩の力を抜いて、お互いを対等に知ろうとするところから始めてみましょう。
私も、これからも一生懸命、こちら側の世界のことをお伝えしていこうと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

宇樹 義子

宇樹 義子

成人発達障害者(高機能自閉症)。30過ぎまで発達障害が発覚しなかったこともあり、思春期から20年ほどもろもろの二次障害に苦しみました。自身の経験をもとに、発達障害者や悩みを抱えた人に向けていろいろと発信中。ライターの仕事のかたわら、個人ブログ「decinormal」を運営。動物が大好き!

▼会員登録がまだの方

▼凸凹ナビ会員の方


凸凹ナビとは?

凸凹ナビ(でこぼこなび)は、障害や凸凹がある人のための求人情報・転職支援サービスです。障害者手帳をお持ちの方や取得をご検討中の方を対象に、お仕事探しのお手伝いをいたします。webサイト上でも、ご希望のエリアや職種・業種で求人を絞り込んで検索することができます。まずは凸凹ナビに会員登録(無料)をして、ご希望条件をお知らせください!


凸凹情報室 人気記事

凸凹情報室 新着記事

カテゴリから記事を読む