障害をオープンにして働くことができる映画館 ~TOHOシネマズの障害者雇用~

凸凹ナビ編集部凸凹ナビ編集部

作成日 2017/07/25 更新日2017/09/05 4,935views

最近、映画館には行きましたか?
TOHOシネマズ株式会社では、全国63箇所のほぼすべての映画館(直営館)で障害のある人を雇用しています。
フロアの案内、座席の清掃、飲食物の提供や販売など映画館を支えるスタッフの中で障害のあるスタッフも一緒に働いています。
そんなTOHOシネマズの障害者雇用について、人事労政部人材開発室の塚原真樹さんと木幡勇也さんにお話を伺いました。

TOHOシネマズの障害者雇用

TOHOシネマズ人事労政部人材開発室の塚原さんと木幡さん

人事労政部人材開発室の塚原さん(左)と木幡さん(右)にお話を伺いました。

塚原)こんにちは。TOHOシネマズの塚原です。
全国のTOHOシネマズではさまざまな障害のある人が勤務をしています。
障害の種別と割合は、身体障害3割、知的障害4割、精神障害3割となっています。
私自身も視覚障害がありますので、本社に勤務している障害のある社員は私を含めて4名ほどいますが、その他の方々は映画館でのアルバイト勤務です。

障害者雇用を始めたきっかけは、2006年に会社の統合によって事業規模が拡大したことです。
規模が拡大すると障害者雇用促進法の対象企業になるので、一定割合の障害者を雇用しなければなりませんでした。
行政からの指導を受けて、経営陣が「全ての映画館で障害者を雇用する」というメッセージを発信した結果、2016年6月時点では53名の障害のある方が働いていて、雇用率は2.97%となりました。
今年度も積極的に採用活動を行いましたので、雇用率はさらに伸びていくのではないかと思います。

映画館のスタッフの仕事とは

塚原さん

塚原さんは視覚障害があり、TOHOシネマズで障害者雇用業務に主に携わっています。

ーー業務の内容について教えてください。

塚原)映画館のスタッフは、接客や清掃、物品補充、宣伝物の設置などをチームで行っています。
障害のあるスタッフも他のスタッフと協力しながら業務にあたります。

木幡)劇場では60~100人のスタッフがシフト制で働いています。
その多くがアルバイトのスタッフです。
勤務シフトが必ずしも同じになるとはかぎりませんので、障害のあるスタッフが入社しても気がつかないことがあります。
そのため、ご本人が希望された場合には「障がい認知用名札」を下げてもらっています。
この名札には「障害があること」と「配慮をお願いしたいことがら」を記載しています。

塚原)基本的には時給も評価基準も健常者のスタッフと同じ勤務スタイルなので、お願いした仕事に対して、きちんと応えていただくことは当然ながら期待いたします。
ただし、そのために配慮が必要であれば劇場内で工夫して対応しています。

障がい認知用名札

「障がい認知用名札」。障害があることや、配慮をお願いしたい事柄を記載した、黄色い台紙の名札。

ーーどのような配慮の前例がありますか?

塚原)弊社の場合には、時間を絶対に守らなければならない仕事と、対人業務が発生する仕事があります。
そのグラデーションがあるので、業務の組み合わせ方をその人に合わせることで、配慮がなくてもできる仕事から始めてもらっています。

「清掃」を例にしてご説明すると、スクリーンの中、ロビー、トイレ、スタッフルームなどさまざまな場所の清掃があります。
スクリーン清掃は、上映時間が始まる前に終わらせないといけませんから、時間内にスピーディーに動けることが絶対条件です。
ロビー清掃は時間の制約は厳しくありませんが、お客様に「いらっしゃいませ」と対応できることが求められます。
トイレはロビーと似たような感じですが、清掃する内容が少し違います。
スタッフルームや従業員専用通路は時間の制約もなく、お客様との接点もないので掃除ができれば担当できます。
最初は、ジョブコーチが入る場合もありますし、他の事例を参考にしたり、支援者などご本人をよく知る方に聞いたりすることもあります。

「配慮はいりません」というよりも、「これと、これと、できればこの部分に配慮してほしい。」ということを伝えてくれれば、会社はそのために準備したり、受入体制を整えたりします。
なので、配慮してほしいことを伝えていただくことが重要です。
後から配慮してほしいことを言われると「もっとあるんじゃないか?」と思ったり、「症状が悪くなっているのかもしれない」と想像したりしてしまいます。

3つの採用基準

塚原さんと木幡さん

ーー障害者を採用する際の基準を教えてください。

塚原)3つの選考基準を設けています。

1つめは「接客適性」です。
弊社は映画館を経営している会社なので、ご本人が接客をしたいかどうかです。
映画館の接客はホテルや飲食店とは違って、お客様と接する時間は限られています。
お出迎えや取り次ぎのときに笑顔ができるかなど、接客の基本要素が中心になります。
そういう仕事をやりたいという意欲があるかを見ています。

2つめは「意欲・柔軟性」です。
映画館では、毎週上映する作品が変わるので上映時間が変わります。
取り扱う商品も入ってくるお客様の数も変わるので、決まった量の仕事を決まったタイミングで行うわけではありません。
新しい仕事や、職場の環境の変化に対してチャレンジ精神をもっている人に来ていただきたいです。

3つめは「安定した勤務」ができるかどうかです。
シフト制のアルバイト勤務なので、人によっては週5日で働いている人もいますが、ほとんどが短時間勤務です。
例えば週3日、1日4時間の短時間でもいいのですが、決めたとおりに自分の体調をコントロールできるかがポイントです。

「がんばります!できます!」と意気込みがあるのはいいことなのですが、当日になって「行けません」となると、現場は困ってしまいます。
シフト制の職場で信頼を得るためには、少ないペースでも決めたとおりに必ず出勤できるほうが、より望ましいといえます。

いままでさまざまな方を雇用するなかで、TOHOシネマズの基準になったのは、この3つです。

障害をオープンにして働ける職場

ーー面接では3つの基準を確認しているのですか?

塚原)面接で確認するのは、もっと手前のことについてです。
例えば「生活は安定していますか?」「主治医の先生はなんとおっしゃっていますか?」などです。
だれにも相談をしないで就職活動をしている人もいますが、だれかにチェックしてもらっているかは、応募書類を見れば「この人をサポートしてくれる人がいるんだな」という部分がすぐにわかります。

地域の相談支援や生活支援を利用している人、就労移行支援事業所や就労継続支援A型・B型に通っている人からの応募もあります。
推薦状をいただくこともありますし、私たちとしては積極的に介入して欲しいと思っています。
支援者の存在がみえていて、その人と良好な関係ができていることは好印象です。

ーー面接会場に支援者が一緒に行くのはNGですか?

塚原)弊社に関していえば「全然あり!」です。
やりとりはご本人としますが、同じ部屋で聞いていただいてもかまいません。

私自身も障害者なので申し上げると、支援やサービスなどの社会資源の活用なくして自立はありえないと考えています。
何も使わずに自立できるなら、その人は配慮を必要とする障害者ではありません。
障害があるのなら、さまざまな支援やサービスを使いこなすことができるほうがいいと思います。

履歴書のチェックだけでなく、自分を客観的にみて意見をもらえる機会はなかなかないですし、活用したほうがいいです。
面接では「あなたのことを、周りの人はどんな風にいいますか?」という質問をすることもあります。

木幡)客観的に自身を判断できるかどうかは、一般雇用の場合にも共通して必要なスキルです。
先ほども、自分に必要な配慮をできるだけ多くあげておくとお話ししましたが、これは自己分析というところなので、この点を伝えることは障害のあるなしにかかわらず、けっこう大変なところかもしれません。

塚原)安易に「大丈夫です」というよりは、そのほうが安心です。

木幡)仕事で活躍するために少しでも自分をよく見せたいという気持ちがあると思うのですが、障害者雇用の場合にはそれが悪い方向に進むことがあります。
「大丈夫です」という言葉が必ずしもこちらに対するアピールとはなりません。
オープンにしたほうが最終的にはいい結果に繋がります。

塚原)入社後に障害をオープンにするかどうするかはご本人に聞いています。
ご自身の中で「障害があることを言うと、いろいろ嫌な目に合うんじゃないか」と重く捉える人もいますが、他のスタッフは「伝えてくれたら、(配慮を)ちゃんとできたのに!」と思っているので、オープンにする方が働きやすくなるはずです。
若い方が多い職場ですし、私たちの職場はそういう雰囲気です。

凸凹ナビ編集部のふりかえり

TOHOシネマズの障害者雇用は、障害者が集まって働く場所を作るのではなく、他のスタッフと同じように働くことを実現している職場です。
障害のあるスタッフへの配慮について、ノウハウの蓄積や情報共有があるかどうかを塚原さんに伺ったところ「ノウハウというか、ひとりひとり違いますからね。」という答えが返ってきました。
こうしたやり取りからも、障害者雇用と合理的配慮の提供に正面から取り組んでいる企業だということを感じました。

凹ちゃん

お仕事探しには、障害や凸凹がある人のための求人情報・転職支援サービス『凸凹ナビ』を使ってみてください。
全国の企業の障害者求人の紹介や、お仕事探しのお手伝いをしています!

凸凹ナビに会員登録(無料)をする

《取材協力》
塚原真樹さん(人事労政部 人材開発室 第2号職場適応援助者)
木幡勇也さん(人事労政部 人材開発室)
※内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。

《参考資料・関連情報》
TOHOシネマズ株式会社

凸凹ナビ編集部

凸凹ナビ編集部

凸凹ナビ(でこぼこなび)は、障害や凸凹がある人向けの求人情報・転職支援サイトです。障害者として働きたい人・障害者を雇いたい人・障害者の就労に関心がある人に向けて、役立つ情報をわかりやすくお届けします!

▼会員登録がまだの方

▼凸凹ナビ会員の方


凸凹ナビとは?

凸凹ナビ(でこぼこなび)は、障害や凸凹がある人のための求人情報・転職支援サービスです。障害者手帳をお持ちの方や取得をご検討中の方を対象に、お仕事探しのお手伝いをいたします。webサイト上でも、ご希望のエリアや職種・業種で求人を絞り込んで検索することができます。まずは凸凹ナビに会員登録(無料)をして、ご希望条件をお知らせください!


凸凹情報室 人気記事

凸凹情報室 新着記事

カテゴリから記事を読む