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「自分の世話をする」発達障害者が健康な生活を送るために大事なこと

宇樹 義子宇樹 義子

作成日 2017/05/26 更新日2018/08/29 9,890views

発達障害者の中には、自分や住環境を十分にケアすることができなくなり、心身の健康を損なっていってしまう人がいます。
発達障害者が健康な生活を送り、最終的に就労を目指すためには、どんなことが必要なのでしょうか。
荒れた生活から時間をかけて立ち直っていった私自身(高機能自閉症)の経験から、ポイントをお伝えします。

セルフネグレクトに陥らないで

セルフネグレクトに陥らないで

発達障害者の生活の改善を考える場合に、大事な概念があります。
それは「セルフネグレクト」です。

セルフネグレクトとは

セルフネグレクトは、もとは英語の self neglect。selfは「自ら」、neglectは「無視する、怠る」などの意味があります。

現在日本で一般に使われている意味でのセルフネグレクトとは
「自分の命や健康が脅かされつつある状態になっても対処をとらなくなってしまう状態」
のことを言います。

2017年、NHKでも特集されたことで話題になりました。

『セルフ・ネグレクト』とは、生活環境や栄養状態が悪化しているのに、それを改善しようという気力を失い、周囲に助けを求めない状態

なぜ普通の人が? “セルフ・ネグレクト”|けさのクローズアップ|NHKニュース おはよう日本

発達障害者はセルフネグレクトに陥りがち?

私は、発達障害者はセルフネグレクトに陥りがちだと考えています。
NHKの特集では、セルフネグレクトの原因は

  • 大切な人の死
  • 失職
  • 加齢
  • 病気

などのなんらかの喪失体験だという説明がありました。

こちらのサイトでは、喪失体験のほかに

  • 孤独
  • 抑うつ状態
  • プライドが邪魔する

などの原因もあげられています。

これは私の考えなのですが、多くの発達障害者は人生のどこかで、「健常だったはずの自分」を喪失する経験をしているはずです。

また発達障害者は、特性上失職しやすく、孤独にも陥りやすい。
二次障害としてうつ傾向にも陥りやすい。

小さなころから周囲から叱責される失敗体験が積み重なりがちなので、人に頼ること、自分の生活を人に見せることを恥ずかしいと考えてしまう…

人生の中で、セルフネグレクトの原因になりがちな要素を抱え込みやすいのが発達障害者なのだと思います。

私たちには自分を大事にする権利がある

私たちはたぶん、物心ついたときからずっと、周囲の人から多くの叱責や誤解を受けてきたと思います。

幼少期は親や先生から、長じてからは先輩や上司、またはネット上の通りすがりの人から、こんなことを言われて深く傷ついてきた人も多いでしょう。

お前は人間としてダメで、周囲や社会のお荷物だ。
ダメ人間はダメ人間なりにおとなしくしていろ。
多くを望むな。生かされているだけでありがたいと思え。

しかし私たちには本来、もっと大事にされていい権利があります。
この権利は、国の最高法規である日本国憲法に定められています。

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

日本国憲法第25条 | 法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

「健康で文化的な生活」にはさまざまな解釈があると思いますが、少なくとも言えることは、私たちには、「ただ動物のように生きて死ぬだけ以上の生活」を求める権利があるということです。

ある程度以上清潔で整頓された居住空間に住み、清潔な衣服を身に着ける。
定期的に入浴して身だしなみを行い、日に何度か、できれば毎日だいたい一定の時間に、栄養と味わいの十分な温かい食事をする。
生活上の喜びや悲しみを、ほかの人たちと分かち合う。
自分が困ったときには誰かに助けてもらい、誰かが困ったときには自分が助けてあげる。
病気になったらできるだけ早く病院に行って治療を受ける。

私たちはたとえばこういった生活をする権利を、生まれながらに与えられているのです。
この権利を行使するために、私たちは誰に対して恥じる必要もありません。
たとえ、私たちをあざ笑い、そしる人たちが世の中にいてもです。

「助けを求める力」をつけよう

「助けを求める力」をつけよう

意外かもしれませんが、「人に助けを求める」というのもひとつの力です。

助けを求めるのも能力のひとつ

人に助けを求めるのに罪悪感や恥ずかしさを感じてしまう人は多いと思います。
しかし、上の項で書いたように、本来、私たちが「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために人に助けを求めることには、なんの恥じる必要性もありません。

私は複数のカウンセラーや支援者から、こんなことを繰り返し言われました。

若い女性支援者
あなたは困ったときにきちんと人にSOSを出せるところがすごい。
それはひとつの立派な能力。
これができなくて、孤独なまま追い詰められていく人が本当に多い。
困ったときにはどんどん周囲を巻き込んでいくことを、これからも忘れないで。

最初はこそばゆい感じでしたが、今はだんだん抵抗がなくなってきました。
なんといっても、せっかくここまで元気になってきた自分を、ふたたび自分で傷つけるのはあまりにもったいないと感じるからです。

支援者や仲間とつながろう

助けてくれる人たち、交流してくれる人たちと、できるだけ多くつながりましょう。
支援者、仲間、友人知人、近所の人、趣味のつながりの人、パートナーなど。

自閉度が高く、それほど人との会話や共同活動を必要としない人であっても、たとえば生活のもろもろの不便を助けてくれる人がいたら頼りたいという気持ちならある人は多いはずです。

ひとりではできないこと、満たせないことがあったら、放っておくのではなく、それを周囲の人たちのつながりの中に求めましょう。

セルフケアについて学ぼう

セルフケアについて学ぼう

上の項では人との間でできることについて書きましたが、次はひとりでできることです。

心身のメンテナンスのために手間をかけよう

私がほんとうによく思うことは、日本ではメンタルケアとかセルフケアの敷居がとても高くて、かなり軽視されているなあということです。
どちらかというと、「苦しめば苦しむほど立派」みたいに考えている人が多いのではないかと感じられます。

苦しみ痛みは確かに人を成長させますが、同じように成長するならば、少しでも楽に、最小限のダメージで成長できたほうがいいと思いませんか?

自分の心身のメンテナンスのために、きちんと手間をかけましょう。
自分自身が親友のひとりだったら、その人が孤独や不安、自己否定に悩んでいたらどんなふうに扱ってあげるか、想像しましょう。
そしてそのように自分を扱ってあげるのです。

メンタルケアの本やサイトを真剣に読むなんてかっこ悪い、自分はそんなに弱い人間じゃない、人に自分がそんな人間だと思われたら恥ずかしい、という感じの抵抗感はわかる気がします。

けれど、その抵抗感のために自分のことを長年放置した結果重いうつ状態に陥り、ほぼ寝たきりの中で苦しんだ経験からいうと、

宇樹 義子
かっこつけてる場合じゃない。死にたくないし、少しでも楽に生きたい

といったあたりが私としての切実な本音です。

できればプライドはいったん横に置いておいて、積極的にメンタルケア・セルフケアについて学んでみるのも、とても大事なことです。

※自分を世話する方法について個人的なことは、こちらのブログ記事に書いています。
「自分の世話をする」ということ - decinormal

怪しい療法にだまされないための注意点

ただし、怪しい療法にはほんとうに気をつけてください。
怪しいものでなくとも、時期や方法を間違えないように…

ネット検索で怪しい療法を見分けるコツ

ネット検索は非常に便利ですが、情報は玉石混交です。
困っている人たちからお金や信心を巻き上げてやろうという怪しい療法は、世の中に数え切れないほどたくさんあります。

ある療法についてネット検索するときに、怪しい療法かどうか確かめる方法のひとつとして、「ネガティブなキーワードとともに検索する」というのがあります。
たとえばこんな感じです。

「○○療法 詐欺」
「○○療法 インチキ」
「○○療法 被害」

劇的な効果がありそうな療法に出会って興奮してしまっているときも、ちょっとだけ落ち着いて、30分でもいいからこういったキーワードで調べてみましょう。
その一手間が、あなたを守ってくれることがあります。

必ず医師の監督のもとで

人の身体や心は千差万別、また同じ人でも時期によって状態は違います。
怪しい療法でなかったとしても、実行する時期や方法を間違うと、かえって大きな悪影響が出てしまうこともけっこう多いです。

ですから、自分でセルフケアを試みてみようというときは、必ず! 必ず、かかりつけの医師に相談し、医師の監督のもと行いましょう。
「こんなことをやってみようと思っているのだけど、おかしくなったり、怪しい療法だと思ったら引き戻してください」
と頼むのです。

※残念ながら、医師免許を持つ医師でもちょっと(あるいはかなり)怪しい人もいるのが難しいところです。
見分け方としては、こちらの拙ブログ記事をご参照ください。

周囲の支援者や仲間などにもあたって、より多くの意見を仰げるとさらによさそうです。
人とつながろうというのは、こういうときの安全網となってくれるという点からも強調していることなのです。

※世の中のさまざまなメンタルセルフケアについての宇樹個人としての意見は、こちらの記事群で紹介しています。

いろいろなものとつながっていこう

いろいろなものとつながっていこう

あえて強い言い方で表現します。
孤独がいちばんいけません。
人々とのつながりを捨ててはいけません。
自分とのつながりを捨てるのはもっといけません。

怖くても、恥ずかしくても、多くの人やものとつながっていましょう。
生きるために、これからも生きていくために。

【追記】人とつながらなくては… と自分を責めなくていい

この記事では、「ぜひ人とつながって」ということを強調しました。

しかし、つらいことが多すぎて、人とつながったり、人に助けを求めたりするだけのエネルギーや安心感が枯渇してしまっている人もたくさんいるはずです。
私にもそんな時期が長くありました。
そんなときは、しばらく人との関わりをお休みしてもまったくかまわないのです。

この記事を書いたしばらくあとに読んだこの本では
「自分の助けにするものは人でなくてもいい」
ということが強調されており、とてもはっとしました。

(つながる相手は)自宅で飼っているインコでも、よく通りかかる家の飼い犬でも、おなじみの場所にいるノラ猫でもいいのです。

こうした、たとえば人でなくとも心の中であいさつするようなほんのささやかなつながりを心の中で数え上げていくことが、あなたを想像以上に力強く支えてくれる、ということが書かれています。

もうほとほと疲れてしまった、人に助けを求める勇気なんか出ない、という人は、ぜひこの本を一度めくってみてください。
著者の伊藤先生の口調は全編にわたって優しく温かく、目の前で語りかけてくれているような感じで、それだけでも私自身、とても癒やされました。

心の中で近所の動物にあいさつすることも、
Twitterで「つらすぎて人にSOSを出せない」と吐露することも、
泣きながら空を見上げることも、
自分を少しでも元気づけてくれそうな本を手に取ることも、
すべて、自分のために何かとつながり、助けを見出そうとするひとつの真摯で立派なステップだと思います。
(こうした行動を、認知行動療法やスキーマ療法では「コーピング」といいます。ストレスや心の痛みに対処する自分なりの方法のことです)

記事に声をお寄せ下さった方、ありがとうございました。
勇気が要ったでしょうに、声を上げてくださったことに感謝申し上げます。
宇樹は今後ともできるだけよい記事をお届けしようと精進していきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

宇樹 義子

宇樹 義子

成人発達障害者(高機能自閉症)。30過ぎまで発達障害が発覚しなかったこともあり、思春期から20年ほどもろもろの二次障害に苦しみました。自身の経験をもとに、発達障害者や悩みを抱えた人に向けていろいろと発信中。ライターの仕事のかたわら、個人ブログ「decinormal」を運営。動物が大好き!

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