【前編】はじめての障害者雇用 ~採用準備のポイント~

凸凹ナビ編集部凸凹ナビ編集部

作成日 2017/04/20 更新日 2017/05/12 616views

採用担当者
障害者雇用の担当になったのですが、なにから始めればいいのかわかりません!
前任の担当者からは「障害者雇用は難しいよ・・・」と聞きます。
何が難しいのでしょうか?

障害者雇用は一般の採用とは異なるので、採用の担当者自身が障害者雇用の制度や事例について理解することが必要です。
その上で経営層への説明や社内の調整をして、労働条件を設定することになります。
採用にむけた取り組みについてご説明します。

採用にむけた取り組みの概要

障害者雇用を行うために担当者はなにをすればいいのでしょうか?
障害者を採用するまでの取り組みは「採用準備」と「採用活動」にわけることができます。

ここでは「採用準備」について「情報収集と社内調整」「配属部署 / 職務の選定」「マニュアル / 助成金の把握」「労働条件の設定」という項目に分けて、それぞれのポイントを解説します。

障害者雇用の流れ

「採用活動」については、以下の記事で解説しています。

情報収集と社内調整

採用の担当者自身が障害者雇用の制度や事例について理解するためには、障害者雇用に関する情報収集が必要です。
担当者自身が知識を得た上で進めていかなければ、経営層や社員の理解や協力を得ることができません。
障害者雇用の情報収集と社内調整について、5つのポイントをご説明します。

採用担当者
障害者の雇用は・・・えっと・・・法律で決まってるらしいけど、それ以外のことはよくわかりません!
質問者の写真
人事部として障害者雇用に取り組んできましたが、本質的には一般の採用と変わらないと思っています。
いい人を採用して長く働き続けてもらうためには、採用担当者が中心になって進めるつもりでいてください。

行政の人
障害者雇用について経営層や社員からの疑問に答えるのが担当者の役割です。
そのために必要な知識と情報をお伝えします。

障害者雇用制度の理解

障害者雇用制度とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律(通称:障害者雇用促進法)」に定められています。
この法律は従業員を50人以上雇用している事業主に対して、労働者の2.0%以上の障害者を雇用することを義務付けています。

民間企業の法定雇用率 2.0%

義務を履行しない場合には不足1人当たり月額5万円が「納付金」として徴収されるだけでなく、「雇入れ計画作成命令」という行政指導や「企業名の公表」という社会的制裁を受けることとなります。

障害者雇用制度については、以下を参考にしてください。

障害者雇用事例の把握

障害者がどのような仕事に従事しているのか。
ハンディを軽減できる職場環境や設備とはどういうものか。
労働時間などの雇用管理面はどうしているのか。

すでに障害者を雇用している企業の事例を知っておくことで、このような不安や疑問の答えを見つけることができます。

障害者雇用事例について、公的機関が発行している資料で知ることができます。

行政の人
障害者雇用の経験のない事業主や従業員に対して、具体的な事例を示すことで不安や疑問を軽減できるでしょう。

支援機関への相談 / 連携

障害者を雇用する事業主に対して相談や支援を行う機関があります。
初めて障害者雇用に取り組む場合、ハローワークなどに雇用支援を依頼したり、各種助成金について相談したりすることができます。
目的に応じた支援機関をご利用ください。

質問者の写真
ハローワークに行って疑問点を相談することで、話がどんどんすすみました。
助成金の手続きについても必要な書類を教えてくれますよ。

経営者・社員の理解促進

障害者雇用を進めるには、経営者が障害者雇用の必要性を示す姿勢が重要です。
そして、経営者と人事担当者と社員が共通認識をもって、コミュニケーションをとりながら以下の役割を担っていく必要があります。

経営者 ・障害者雇用の方針の決定
・全社員への方針の浸透
・社員へのメッセージの発信
人事担当者 ・障害者雇用計画策定
・経営者、受け入れ部署との調整
・採用活動
受け入れ部署社員 ・障害者の教育訓練
・障害者の労務管理
・障害者への理解

引用:独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構「はじめからわかる障害者雇用」p,15

採用担当者
それぞれの役割が明確になると仕事が進めやすいです!

全社に向けた周知

全社に向けて経営者が障害者雇用を進める必要性を示したうえで、採用担当者からは具体的なイメージを持てるような情報を提供します。

  • 社内会議で周知を行う
  • 社内報に記事を掲載する
  • 資料を作成して配布する
  • 研修を実施する
質問者の写真
うちの場合は、月末総会のときに社長から全体にアナウンスをしました。

配属部署 / 職務の選定

配属部署と職務内容を決めるには2つの方法があります。
ひとつは既存の職種から従事する職務を選ぶ方法。
もうひとつは、障害者が従事できる職務をつくり出す方法です。
それぞれのポイントをご説明します。

行政の人
採用担当者がよく悩むのが「職務の切り出し方」だと思います。
大企業の場合には、障害者のある従業員が集まって働く特例子会社を作る方法もありますが、それが難しい中小企業の場合にはどんな方法があるのか。
以下を確認してください。

既存の職務から選ぶ

職場環境の改善や就労支援機器の導入、適切な教育訓練によって既存の職務に障害者が従事する方法です。
一般的には各障害に共通の特性があるので、特性に応じて職務を検討することができます。

■ 肢体不自由者には、移動が少なくて座って行える職務
■ 視覚障害者には、視覚的判断や頻繁な移動の必要がない職務
■ 内部障害者には、長時間の残業や交代勤務のない職務
■ 知的障害者には、簡単な判断で行える職務
■ 精神障害者には、対人関係が少なく短時間勤務が設定しやすい職務

引用元:独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構「はじめからわかる障害者雇用」p,20

凸ちゃん
障害の種類や特性によって不向きな職種もありますが、同じ障害でも状況、程度、スキルはひとによって違います。
障害だけでなく本人の希望や意欲を見て決めてくれたら嬉しいです。

新規の職務をつくり出す

障害者が従事しやすい職務をつくり出す方法です。

やり方が決まった作業を集めて再構築することで障害者の雇用が可能となります。
例えば、事務所であればコピー、シュレッダー作業、清掃作業、資料のセットと封入など、社員の中に分散して組み込まれている作業を集約して新しい職務にできます。

社員にとっては自分の職務に専念できるというメリットもあります。

凹ちゃん
私は事務の仕事をしています。シュレッダー作業が中心です。
他にもPCデータ入力、社内メールの仕分け、書類のファイリング、ゴミの回収、事務所の清掃を担当しています!

マニュアル / 助成金の把握

障害者が働きやすい職場を作るためのマニュアルと助成金をご紹介します。

行政の人
障害者が働くために「●●が整っていないと障害者を受け入れられない」ということはありません。
障害のある社員と相談をして、必要性の高いものから改善していく方法もあります。

障害特性に応じた職場改善例

障害者雇用に役立つ資料として、独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構が以下のようなコミック版障害者雇用マニュアルを発行しています。
これらの資料を参考にして働きやすい職場をつくることができます。

『視覚障害者と働く』 視覚障害についての基礎的な知識、就労支援機器や支援制度の活用例、職場での具体的な支援方法、雇入れと職場定着に必要な雇用管理の手法などについて解説している。
『知的障害者と働く』 知的障害についての基礎的な知識、日常生活上の指導・配慮点、能力開発などについて解説している。
『聴覚障害者と働く』 聴覚障害についての基礎的な知識、雇用管理全般に関するノウハウについて解説している。
『精神障害者と働く』 精神障害者の採用から定着までをメンタル不調で休職している社員の職場復帰を取り上げて解説。精神障害者の雇用管理についても掲載している。
『発達障害者と働く』 発達障害についての基礎的な知識、わかりやすい作業指示の出し方、コミュニケーション上の留意事項などのノウハウについて解説している。
『高次脳機能障害者と働く』 高次脳機能障害についての基礎的な知識、支援機関の活用例、職場での具体的な支援方法などを盛り込みながら、雇入れと職場復帰に必要な雇用管理の手法などについて解説している。

助成金

障害者雇用に関する各種助成金や支援制度もあります。

国の助成金

「障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)」や「特定求職者雇用開発助成金」、「障害者職場定着支援奨励金」など、さまざまな助成金があります。
助成金の詳細はお近くのハローワークまたは独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の都道府県支部にお問い合わせください。

参考:【まとめ】障害者雇用に関わる9つの相談・支援機関 ~所在地・対象・サービスの概要~

都道府県ごとの助成金

都道府県ごとに独自の助成金制度もあります。東京都の場合には「東京都中小企業障害者雇用支援助成金」や「東京都障害者安定雇用奨励金」などがあります。
助成金の詳細はお近くのハローワークまたは都道府県ごとの産業労働局にお問い合わせください。

参考:東京都産業労働局

労働条件の設定

求人募集をするためには職務内容や勤務時間、賃金などの労働条件を決める必要があります。
労働条件を元に求人票を作成して、ハローワークに届けを出したり募集活動を開始したりすることができます。
労働条件を検討する際に取り組む3つのポイントを説明します。


質問者の写真
職種を限定せずに幅広い職種で求人を出したけれど、なかなか応募が来ないことがありました。
しっかりと決めて募集をするほうがいいのか、応募者に合わせて仕事や配属を検討するほうがいいのか。どうなんでしょうね。 

雇用形態

一般的に従業員の雇用形態は職務内容やその責任の範囲、勤務時間などの労働条件、本人の希望などを踏まえて決定しますが、障害者雇用の場合も同じです。
障害者だから正社員として雇用しないということは法令違反となります。

また、非正規社員や短時間労働者でも一定の条件のもとに障害者雇用率の算定対象になります。
以下を参考にしてください。

雇用障害者数のカウント方法

就業時間

就業時間はひとりひとりの状況に応じて検討することが必要です。
就業時間を調整することで働ける人もいるので、時差出勤や短時間勤務、休暇取得などの配慮が望まれます。

凸ちゃん
私はラッシュで混み合う時間の通勤が難しいです。
それを相談して、勤務開始時間と終了時間を1時間ずつ繰り下げる配慮をいただいています。
おかげで労働時間を変えずに通勤の負担を減らすことができました。

賃金

障害者雇用のために特別に賃金体系をつくる必要はなく、一般社員と同じように業務に応じて賃金を決めてください。
独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構が発行する『はじめからわかる障害者雇用』を参考にすると、以下の3つの点に留意して賃金を決めることを推奨しています。

最低賃金の遵守 障害者との労働契約は基本的に通常の労働契約と変わりありません。
障害者を雇用した場合にも最低賃金法が適用されます。
職務評価・業績評価の反映 一律賃金を設定せずに本人の職務遂行能力や業績も賃金に反映したほうがモチベーションの維持のためにもよいでしょう。
関係機関への相談 最低賃金法8条に基づく最低賃金額の減額特例措置や、重度障害者の特例措置などがあるのでハローワークや労働基準監督署に相談 / 申請を行ってください。
行政の人
厚生労働省の「平成25年度障害者雇用実態調査」によると、身体障害者の離職理由は「賃金、労働条件に不満」が32.0%で、「職場の雰囲気・人間関係」が29.4%でした。
障害者雇用だからと安い賃金で良しとせず、長期的に働いてもらうために企業の姿勢が問われますね。

採用準備ができたら次のステップへ

障害者雇用の採用準備の際に取り組む事柄についてご説明してきました。

「情報収集と社内調整」では、採用のご担当者自身が障害者雇用の制度や事例について理解を深めるために必要なポイントを説明しました。
「配属部署と職務の選定」では、障害者が従事する職務について既存の職務から選ぶ方法と新しい職務をつくり出す方法について説明しました。
「マニュアル / 助成金の把握」では、障害者が働くための職場改善の事例と各種助成金を紹介しました。
「労働条件の設定」では、求人募集にむけて職務内容や勤務時間、賃金を決める際のポイントについて説明しました。

上記に加えて、他社の障害者雇用の事例を参考にすることもできます。
障害者を雇用したい企業と障害者として働きたい人をつなぐ、凸凹ナビ(でこぼこなび)をご活用ください。

凸ちゃん

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採用に向けた取り組みとポイントを押さえて、つぎは採用活動に進みましょう!

《補足》
・ここで掲載しているデータや組織名称は2017年4月20日現在のものです。

《この記事の参考にさせてもらった資料》
・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(2015)『はじめからわかる障害者雇用 事業主のためのQA集』
・東京都産業労働局雇用就業部就業推進課(2016)『雇用主と雇用支援者のための障害者雇用促進ハンドブック』
・武蔵野市地域自立支援協議会はたらく部会(2017)『障害者雇用「こんなとき」事例集~ともに働くためのちょっとしたヒント~』
・労務行政研究所(2016)『障害者雇用の実務』株式会社労務行政

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凸凹ナビ編集部

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